★幼児教育小委員会で法案作成作業
2015年7月13日(月)、東京虎ノ門のホテルオークラで全日本私立幼稚園PTA連合会(河村建夫会長=衆議院議員・元文部科学大臣)の第30回全国大会が開催された。第30回とはすなわち、旧三団体が統合して全日本私立幼稚園連合会(香川敬会長=山口県・鞠生幼稚園)が誕生してから30年たったことを意味する。
幼稚園児の母親を中心に各都道府県のPTA代表1000人が会場を埋め、ステージには安倍晋三内閣総理大臣、下村博文文部科学大臣ほか自民党幼児教育議員連盟(中曽根弘文会長=参議院議員・元文部大臣)に所属する85人の衆参国会議員が並んだ。若い母親が多いため、会場は幼稚園らしい華やいだ雰囲気に包まれた。
私立幼稚園関係の集会ではもっとも規模の大きいのが同大会。出席した国会議員を一人ひとり紹介することで幼稚園教育に対する協力者を確認し、支援者との絆を深め、議員同士の結束を高めてもらうのが目的である。その結束で私学助成の増額、幼児教育無償化の推進、子ども・子育て支援新制度の軌道修正を行ってきたが、今年の大会は「幼児教育振興法(仮称)」がキーワードだった。
法案作成の作業は、自民党文部科学部会(冨岡勉部会長=衆議院議員)の中に幼児教育小委員会(山本順三委員長=参議院議員・全日私幼PTA連副会長)が設けられてすでに始まっている。2017年通常国会での議員立法成立が目標だ。中身はまだ公になっていないが、おおよそのところを読み解いてみよう。
★私学助成と就園奨励費を一本化
目的のひとつは幼児教育無償化のテコ入れだ。無償化はすでに幼稚園就園奨励費制度の拡充で着実に広がっている。第三子は全員無償、第二子の負担も大幅に減り、所得の低い世帯では第一子もほぼ無償化されている。ただ国の財政事情を考えると、2020年までに幼稚園、保育所、認定こども園に通う3〜5歳児の全員を無償化するのは難しいかも知れない。しかし5歳児全員の無償化は可能性がある。
私立幼稚園の園児については、標準的な教育経費の半額を私学助成でまかない、残る半額を就園奨励費で軽減するのが無償化の構造だ。私学助成は私学振興助成法という根拠法があるが、就園奨励費には根拠法がない。「無償化の時代に“就園奨励”でもないだろう」との意見もある。そこでこの際、私学助成と就園奨励費を一本化して無償化のための新たな財政根拠法をつくる。それが幼児教育振興法の第一の目的である。
もうひとつは認定こども園の問題。新制度の認定こども園に通う“1号こども”(=ふつうの幼稚園児に該当する子ども)に対する給付金は、上記の私学助成と就園奨励費が基本ベースで、それに新制度の財源が加算される仕組みになっている。保育所から移行した認定こども園も同様だ。となるとやはり旧来の枠で対処するのは難しくなるので、保育所、認定こども園に通うすべての3〜5歳児の教育経費も対象にした財政根拠法が必要となる。それは同時に、保育所の仕組みを幼稚園にあてはめた新制度は、幼児教育の財政には無理がある。もっと幼稚園に軸足を置いたものに改めていこうというネライでもある。
★全会一致の議員立法をめざし
さらに大事なことは、2005年の中教審答申(今後の幼児教育のあり方について)に示された幼児教育の重要性、家庭・地域との連携の大切さをもう一度呼び起こし、法律に明記するネライがある。特に答申が強調している「幼児の生活および発達や学びの連続性を踏まえた幼児教育の充実こそ肝心」をアピールすることで、5歳児が義務化されても、これまでの幼児教育が分断されたり混乱することのないようにとの歯止め策である。5歳児義務化の議論が始まる前に、私立幼稚園としては是非ともほしい防波堤だ。
同じ名称の「幼児教育振興法」が、韓国では1982年に制定されていて、これによって韓国の教育環境、財政支援は日本を追い抜くほどにレベルアップしたと言われる。30年以上も遅れてしまったが、いよいよ日本もネジを巻くことになる。PTA連の河村会長は、与野党全会一致の成立をめざすと表明したが、果たして野党が乗ってきてくれるか、その推移を注目したい。
(参考資料)
・PTA大会で河村建夫、中曽根弘文両氏の挨拶(YouTube動画)
・2005年中教審答申の内容(文科省HPへリンク)
幼稚園情報センター・片岡 進