★「世界が注目する制度」と有村少子化相
2015年4月、新たな認定こども園制度を柱とした子ども・子育て支援新制度が始まった。そして5月21日(木)、新メンバーによる最初の子ども・子育て会議(通算第24回)が開催された。任期2年の新委員34人は添付資料のとおり。委員の互選で白梅学園大学の無藤隆教授が引き続き座長を務め、座長の指名で中央大学大学院の佐藤博樹教授が座長代理に就任した。
何とか船出したとはいえ、その内容は「すべての子どもに良質な幼児教育、公平な財政支援を行う」「親の就労や家庭状況に関わらず自由に教育・保育の場を選べるようにする」とした本来の理想にはほど遠いもの。また私立幼稚園関係者の間には「長時間保育が拡大して子どもの健全な成長が損なわれる」「自由で特色ある私学教育が制約される」などの否定的意見が多い中での見切り発車でもあった。
旧メンバーによる最後の会議(3月19日開催)で「いろいろな問題があることは承知しているが、日本が満を持して作り上げたこの制度を世界中の関係者が注目している。揺らぐことなく進めていきたい」と述べた有村治子少子化対策担当大臣は、5月の会議では「今後は制度の点検、評価を行い、改善、充実を進めて一兆円超の財源確保に万全を尽くしていく。委員各位の心をひとつにした協力をお願いしたい」と述べた。また「子ども・子育てに加えて、結婚・妊娠を支援する少子化社会対策大綱に基づく政策を集中的に進めていく」と、子ども・子育てには一区切りつけて、次の課題に取り組んでいく姿勢を示した。
代表を送り込んでいる団体の多くが委員を交代した。私立幼稚園関係では、全日本私立幼稚園連合会が北條泰雅副会長(東京都・みなと幼)に代わって坪井久也政策委員長(香川県・やしま幼)が、(公社)全国幼児教育研究協会は宮下ちづ子理事長(静岡県・静岡豊田幼)に代わって加藤篤彦専務理事(東京都・武蔵野東第二幼)が委員になった。全日本私立幼稚園PTA連合会は月本喜久副会長(東京都・鳩の森八幡幼)が継続し、また全国認定こども園協会は王子直子副代表理事(佐賀県・ルンビニー幼)、全国認定こども園連絡協議会は木村義恭会長(北海道・白雪幼)がそれぞれ新委員になった。
★幼児教育振興法で制度の修正へ
民主党政権下のワーキングチーム時代から6年余にわたって委員を勤め、「この制度は決して子どもの最善の利益にはならない」と反対を貫いた北條泰雅氏は、2015年3月9日(月)、(公社)全埼玉私立幼稚園連合会(四ツ釜雅彦会長)の総会で講演し、改めて同制度の問題点を訴えた。
北條氏が指摘した主な論点は「0歳から2歳まで家庭で親が行う保育は児童福祉法が定める保育に該当する。ところが教育・保育給付はその子どもを対象外にしている。許されないことだ」「国が公定価格、利用者負担を定めることで、公私幼保の別なく公平な給付制度が実現するはずだったが、法の条文に反して公立幼稚園は自治体が公定価格、利用者負担を自由に決め、保育所は従来の委託費のままとになった。私立幼稚園だけが苦しい経営を強いられることになる。このままでは私立幼稚園に未来はない」など。
また「1994年の子どもの権利条約批准から始まり、2005年の中教審の幼児教育答申、そして教育基本法改正、幼児教育振興プログラム、学校教育法改正と、日本の国家観は明らかに家庭教育、幼児教育重視で動いてきた。それが民主党政権によってストップし、方向を曲げられた。もう一度、中教審答申に示された内容に立ち戻り、幼児教育振興法(仮称)を成立させて新制度を修正していかなくてはいけない」と訴えた。
制度が動き出すと根本を変えることは難しく、そのまま流れていきがちなのが世の常だが、こうした意見、指摘があることを忘れず、中央・地方の子ども・子育て会議、また私立幼稚園関係者には、今後ともねばり強い運動で新制度を理想の姿に近づけてほしいと願うばかりである。
・子ども・子育て会議の委員名簿(PDF)
・北條泰雅氏の講演の一部(YouTube動画)
幼稚園情報センター・片岡 進