全埼玉私立幼稚園連合会が開催した

「平原隆秀先生感謝のつどい」で思ったこと

言葉少なに深い思いを参加者に伝え

2015年8月17日
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平原隆秀(ひらはら・りゅうしゅう)

平原隆秀(ひらはら・りゅうしゅう)
全埼玉私立幼稚園連合会名誉会長。学校法人平原学園理事長、姫宮成就院幼稚園園長。真言宗智山派大僧正。1939年1月生まれ、春日部市出身。東洋大学印度哲学科卒。子ども4人、孫12人。

メドレーコンサートの最後はみんなで「夕焼け小焼け」を歌った。

メドレーコンサートの最後はみんなで「夕焼け小焼け」を歌った。

平原門下生の代表として松居和氏(教育評論家・音楽プロデューサー)もリレー講演の選手と務めた。

平原門下生の代表として松居和氏(教育評論家・音楽プロデューサー)もリレー講演の選手を務めた。

★県団体の会長を26年間
 2015年2月24日(火)、浦和ロイヤルパインズホテルで「平原隆秀先生感謝のつどい」が行われた。平原隆秀氏(春日部成就院幼稚園理事長)とは、(公社)全埼玉私立幼稚園連合会の会長を、1988(昭63)年から2014(平26)年まで26年間務めた人である(現名誉会長)。その長年の労苦に対し感謝の気持ちを伝えようというもので、特に珍しいものではない。しかし案内状を受け取った人は目を見張ったことだろう。発起人代表が全日本私立幼稚園連合会の香川敬会長(山口県・鞠生幼稚園)で、発起人の筆頭に同PTA連合会の河村建夫会長(衆議院議員・元文部科学大臣)の名があったからだ。前例のない形である。
 どうも平原氏は感謝会には消極的だったようだ。「生意気な若造が会長になって、強引なことも随分やった。あちこちに迷惑をかけ、反発も買った。それでも多くの仲間が支えてくれた。県内の幼稚園や全国の仲間に感謝するのは私であり、感謝されるなんておこがましい。どうしてもやるのなら常任理事の人達だけでこじんまりと……」というのが本音だったようだ。
 しかし、すべて名誉会長の言にしたがってきた四ツ釜雅彦新会長以下執行部も、こればかりは「ああそうですか、ではそのように」とはいかない。功績のあった人をきちん遇し、その姿を内外に示すのが“人の道”で、それを外すわけにはいかないからだ。押し問答が続いたが、最後は平原氏が押し切られた。その押し切りの切り札となったのが香川会長、河村会長のようである。
 全日私幼連の副会長、関東地区会の会長も務めた平原氏は全日私幼連の運営には協力的だったが、一方で筋を曲げない一徹な人でもあり、「これはおかしい」と思うと最後まで反対を通す人でもあった。しかも約550園が加盟する埼玉県の結束は固く、県会長の意向をやり過ごすことはできない。全日私幼連やPTA連合会にとっては煙たい存在でもあった。
 その香川会長と河村会長は、「子育てフォーラム、さまざまな出版広報事業、ユニークな教員研修事業、きめ細かな教育相談。そうした埼玉県の充実した活動、そして平原先生の的確な直言と幅広い人脈が全国団体を活性化してくれた。感謝に耐えない」と煙を払った。そのほか上田清司埼玉県知事、清水勇人さいたま市長、国会議員、県議会議員から、平原名誉会長とのエピソードを交えた挨拶が相次いだ。会場は約400人の参加者で埋まり、にぎわいムードに溢れた。平原氏が大好きな大パーティだった。しかし本人は終始静かな笑顔を浮かべるだけだった。
 そして、いつもは強い口調で激を飛ばす平原氏の挨拶は、「皆さん、そして皆さんのご両親、祖父母の方々が支えてくれて、ここまで来られました。本当にありがとうございます」と驚くほど簡単に切り上げ、参加者に向かって三度、深々と頭を下げた。「自分の時代が今この瞬間に終わった。まだまだやり残したこともあったが、あきらめよう」。そんな思いが頭を掠めたのかも知れない。本人の胸の内が、参加者の心のスクリーンに映し出されたような気がした。

★メドレーコンサートとリレー講演
 「感謝のつどい」は、第1部「歌とお話のつどい」、第2部「食事と懇談のつどい」の二部構成で行われた。その第1部は、まさに“平原プロダクション”とも呼ばれる人脈のエッセンスだった。
 26年間の在任中、平原氏がもっとも力を入れたのが「子育てフォーラム」である。埼玉県の会長に就任した1988年の秋、旧三団体を解散統合して誕生した全日私幼連は、記念イベントとして「インファントピア88」を開催した。その中のひとつに、園児保護者に対して楽しい子育て実践論を語る「子育てフォーラム」があった。これが好評で「どうか全国に広げてください」と各都道府県団体にバトンタッチされた。それを一気に拡大し、営々と継続しているのが埼玉県である。
 参加するお母さんたちに負担がかからないようにと、毎年、県内各地20数カ所で開催するようになり、中身も埼玉流に進化した。専門家が語る面白い子育て講話に、プロ歌手と一緒に歌う音楽タイムを組み合わせたのである。シニア対象の「孫育てフォーラム」では落語家も登場する。
 そこで、この日の第1部では、子育てフォーラムでおなじみの出演メンバーから音楽家10人と講師4人が選ばれ、メドレーコンサートとリレー講演を行ったのである。埼玉県は下総皖一、清水かつらなど多くの作曲家、作詞家を生んだ童謡と唱歌のふるさとである。コンサートは大岩誓子氏ら7人の声楽家が、埼玉ゆかりの歌を一曲ずつリレーした。
 後半のリレー講演は、教育カウンセラー・金子保、教育評論家・松居和、作曲家・早川史郎、音楽評論家・貝沼実の四氏が話をつないだ。いずれもネームバリューの高い人だが、持ち時間は1人15分。聞く立場からすれば、随分もったいない企画であり、また贅沢な時間でもあった。そして話の中身はしっかり詰まっていた。「余計な話をしなければ講演は15分でも十分なんだな……」と思ったものである。この第1部のプロデュースと演出が、平原隆秀氏であったことは言うまでもない。

参考付録
(1)第1部メドレーコンサート(YouTube動画)
(2)第1部リレー講演(YouTube動画)
(3)第2部「発起人、来賓挨拶ほか」(YouTube動画)


幼稚園情報センター・片岡進