カラフルライフでヤル気と幸福感を

幼児期に磨かれる色彩感覚

ランドセルは子どもの選択を大切に

2023年3月26日
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ランドセルは子ども本人の選択を優先するのがベスト。自分で選んだ色なら、6年間、大事に使い続けます。

ランドセルは子ども本人の選択を優先するのがベスト。自分で選んだ色なら、6年間、大事に使い続けます。

今村美香(いまむらみか)

今村美香(いまむらみか)
1985年10月生まれ、函館市出身。
函館短大調理製菓専門学校卒。
11級色彩コーディネーター。函館短大非常勤講師、精華学園函館高校講師。

★「男子は20人に1人が色弱」にも留意
 「年寄りは、最近のことはすぐ忘れるが、古いことはよく覚えている。だから“昔は…”で話し始める人が多い」と言われます。古稀を過ぎた私も、その傾向が強くなったようで、幼稚園を訪ねるたびに「今の子どもは、昔とはずいぶん違う」と、我が子あるいは自分自身の幼稚園時代と比べてしまいます。違いのひとつがカラフル性です。今の子どもたちは、その服装や持ち物から、一人ひとりがカラフルに輝いて見えます。同色のスモックや体操着を使う園が減って、自由な服装の園が増えたせいかも知れませんが、スモックを使っている園でも、靴やハンドタオル、お弁当袋などに色のアピールを感じます。
 東京のF園は、体操着の代わりにロゴ入りのTシャツを着ます。その色は10色以上も用意されています。自分の好きな色、似合う色を選びますが、色違いを数枚持っていて、その日の気分で色を選ぶ子も多いそうです。ファッション感覚が育っているわけですが、そうした色彩感覚は、家族とくに母親から大きな影響を受けるといいます。
 色の使い方について、園児の母親らに講演活動をしているカラーコーディネイターの今村美香さん(函館短大非常勤講師)は「子どもの色彩感覚は3歳までに80%が決まります。だから、お腹の赤ちゃんの胎教を始める時から、お母さんは明るい服装で過ごしてほしい」と呼びかけます。色は光、つまり一種の電磁波なので、眼だけでなく皮膚でも感じます。壁が赤い部屋に入ると暖かく感じ、青い部屋は涼しく感じる所以です。そのため母親の服装の色は、皮膚を通して胎児の皮膚にまで届くというわけです。もちろん3歳以降の色彩環境も影響を及ぼしますので、幼稚園の先生方がいつも同じジャージを着ているのは首をひねらざるを得ません。
 今村さんの講演会でよく質問があるのは、年長の時に準備するランドセルの色です。昔は、男は黒、女は赤と決まっていたものですが、今は、それこそ24色のクレパスのようにバリエーションが豊富です。非常に高価で、しかも6年間使うものなので、子どもがピンクやイエローを選んだりすると、親はつい「あとで後悔するわよ。高学年になると、きっと落ち着いた色を好むようになる。だからブラウンかネイビーにした方がいい」と口出ししがちです。
 これについて今村さんは「高学年になって後悔することはありません。毎日使っているモノは、どんな色も馴染んで気にならなくなります。それより、これで小学校に行くんだというワクワク感こそ大切にしてほしい。ピンクのランドセルを選んだ子は、将来、幸福の色ピンクを上手に取り入れる大人になっていくでしょう」と言います。
 赤はやる気を生む、青は気持ちを静める、黄色は友好性を呼ぶ……など色には特性があります。それを知って上手に使っていくと、対人関係や第一印象を良くすることができるそうです。それだけ色は強い力を持っているわけです。
 講演の最後に今村さんは「色弱(色覚多様性)」について触れました。日本人は、女性にはほとんどいませんが、男性は5%、20人に1人が色弱(大半は赤も緑も茶色に見える赤緑色弱)で生まれます。以前は学校で色弱の検査が行われましたが、無用な差別になりかねないと今は検査をしていません。そのため自分が色弱であることを知らずに大人になる男子は少なくないと言われます。
 信号機の改善などで、生活の支障はほとんどありませんが、色弱では就けない職業もあります。描画の色使いなどで「おや?もしかしてこの子は…」と気づくのは親か幼稚園の先生です。気づいた時は情報を共有し合って「必要な時に本人に伝えるのが良いでしょう」と今村さんは締めくくりました。ますます進化するカラフル社会にあって、忘れてはならないことだと思いました。
幼稚園情報センター 片岡 進